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2008年9月

2008年9月30日 (火)

環境省 植生図づくり

環境省が自然環境保全基礎調査として進めている植生図作成についての中四国ブロック会議.13時30分~16時30分,岡山市にて.

日本では1/50000のスケールの植生図が国土全域にわたって作られている.1980年代に環境庁によって推進された事業.何回かの小さな見直し過程を経て,今,完全な作り直し作業が進められている.今回は1/25000のスケール.ブロック会議では,それぞれの地域で行われる調査手法や,その調査で確認される植物群落に対してどのような名前(凡例)を与えるかを検討する.個々のブロックでの検討結果は,「凡例検討部会」で日本全体での整合性が検討され,植生図に反映される.

中四国ブロックには座長の波田先生(岡山理科大学学長)や,清水先生(もと鳥取大),豊原先生(もと広島大),石橋先生(もと広島大)をはじめとして,石川先生(高知大),末廣先生(香川大),松井先生(松山東雲短大),西本先生(岡山県自然保護センター)といった植生学のスペシャリストが集まっている.僕はそのような場に加えてもらえていることに恐縮しつつ参加している.

それぞれの地域をくまなく歩き,現場を見続けてきた先生方のリアリティのある話は,とても面白い.そして,群落の分布を決定づける環境要因がどのようなものであるのか,その経験に基づく群落(あるいは群集)の区分に係る見解はとても勉強になり,刺激的だ.

植物社会学的調査に基づいて作られる植生図は,現場で直観的・経験的に把握される諸々の環境要因と,そこに生育する植物との関係が総体として把握され,表現されている.少し前までは環境因子を面的に把握し表現することが難しかったので,植物群落の分布境界は「えいっ」と描かれてきた.けれども今はGISの発達や空間情報の整備によって,環境要因を面的に表現することが可能になってきている.そのため,環境要因とそこに成立する植物群落との対応関係がきちんと整理され把握されれば,群落の境界を今まで以上に科学的に(つまり検証可能な形で)描くことができるようになるはずだ.そのような技術は,僕たちの研究室で蓄積されてきている.

僕は先生方が現場での経験から把握してきた環境要因と植物群落の分布との対応に関する話を聞きながら,植物群落の分布を決定づける鍵となる環境因子をどのようにして切り出し,どのような方法で地図に表現したらいいのだろう,なんてことを考え続けていた.そんなとき,植生調査業務を行っている若手技術者から,同様のアイディアでの植生図作成を,今回の業務の中で試してみたいということが提案された.結果が出るのがとても楽しみだ.

ちなみに,今回の植生図作成は9年にわたって続けられているが,現在の整備率は国土の40%弱にすぎない.このままでは,国土全体の植生図が完成するまで,まだ10年以上かかることになる.そのため,もっと効率的に植生図を作成するための方法や,作成される植生図の利活用のあり方についての検討が「技術手法検討部会」で行われている.GISを駆使した研究を行っている原さん(東京情報大/景観生態学会副会長)が座長で,5人のメンバーのほとんどは景観生態学会の中核を担っている方々.この検討部会で,僕は植生図作成の過程をもっと体系化して国土モニタリング手法として構築すべきだと主張してきていて,そのアイディアは今年度からワーキンググループでもんでいくことになっている.

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2008年9月29日 (月)

絶滅危惧種の保護

希少野生生物保護専門員会議.10時~12時,徳島県立博物館にて.

「希少野生生物保護専門員」というのは,「徳島県希少野生生物の保護及び継承に関する条例」の中で定められていて,希少野生生物の保護に関する啓発、調査、助言等を行うことになっている.個々人が任命されるので,いわゆる委員会のような会議体ではない.だから会議など開く必要はないのだけれど,指定希少種の選定に係る助言,その保護管理の在り方に係る助言等を行いつつ,専門員間での情報交換および合意形成を図っていくために,県の呼びかけに応じて集まっている.僕もその一員で,便宜的な座長役も引き受けている.

徳島の場合,大学等で研究を本職として生き物に関わっている人はとても少なく,専門員の半分くらいは,仕事の傍らで徳島の生物について調査を続けてこられた方々.そのぶん,自然保護への想いの人一倍強く,自然保護の施策を前進させるためには労をおしまず,休みも返上して協力してくれる.それだけに,県の担当者が職責を果たそうとしなかったときはもちろん,無駄と思える事業を提案してきたり,「やっていくべきこと」について議論したいときに「できない理由」の羅列がはじまると手厳しい.今日はその手厳しさが全面に出てしまった会議だった.

「野生生物を守る」,すなわち「人々が生態系サービスを享受し続けられるよう,多様性に満ちた健全な生態系を維持する」ということは,行政にも専門員にも共通の目標であるはずだ.協力しあえる体制をつくっていかないとならないのだけれど,その隙間を埋められないのは,その目標が共有されてないからなのだろうか.今日はくたびれた..

ちなみに,徳島の条例の特徴・先進性は,指定希少野生生物(保護が義務付けられ違反に対して罰則規定が適用される種)や,保護区の指定申請を県民のだれでもができる枠組みを持つこと.保護区は指定希少野生生物が生息・生育している場所のほか,5種以上のRDB種が生息・生育している場についても,面積にかかわらず指定することができる.後者のいわゆるホットスポット型の保護区指定ができるのも,全国でもめずらしい.

大学に帰ってから,17時までの間に2つの会議.押し寄せてくる仕事..

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2008年9月27日 (土)

NPO徳島保全生物学研究会 新町川・助任川シンポジウム

NPO法人 徳島保全生物学研究会によるシンポジウム「新町川・助任川シンポジウム―みんなでつくろう,川のにぎわい」を開催.NPOメンバーの八木先生(徳島大学名誉教授),高麗先生(徳島大学教授),木下先生(もと小学校校長/徳島水草研究会会長)による企画.

新町川・助任川をテーマとしたシンポジウムは,昨年9月29日に続き2回目.昨年は,新町川・助任川(すけとうがわ)の環境の現状や環境改善に取り組むNPOの紹介が中心だった.今年は,具体的な活動に結びつけていくことが意図された.

個性的な方々による話題提供.

1)郡賢治(遊山箱倶楽部 事務局長) 新町川とまちおこし

遊山箱.いろんな装飾がほどこされた弁当箱.それにお弁当とかお酒をいれて,みなで集まって風景を愛でながら食す.かつての風流.以前,徳島大での僕の同僚だった三宅さんがしかけ人となって,徳島の多様な遊山箱や,それを作る伝統があることが最近になって見直されてきた.今は郡さんがその活動のまとめ役を果たしている.まずは1年間で1000個にまで遊山箱を増やすことからはじめて,その目標は達成.今は,キットを使って自分たちで遊山箱を組立てるという活動に発展させている.子どもから大人まで,いろんな人がMy 遊山箱を作る.

郡さんは新町商店街で商売を営む.今までイベント屋に丸投げだったイベントを,自らで企画し,商店街の人たちや周辺で活動を続ける「NPO新町川をよくする」等とのも連携して,自らで実現する方向に転換してきている.郡さんが使った「町衆」という言葉が印象的だった.新町という街に,新しい広場を作ろうとしている.

後で話する中で,郡さんとは僕と1歳違いで,小中高も同じだったということが発覚.. ローカルシンポジウムならではの楽しさ.

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2)森本康滋(NPO法人 徳島保全生物学研究会 評議員) 助任川・新町川に緑を―水辺とのコミュニケーション

森本先生は,助任川の近くで生まれ育ち高校の教員をしながら徳島の自然保護活動を牽引してこられた方.僕たちNPOの評議員として発表してくれたけれど,徳島県自然保護協会会長,日本生物教育学会徳島支部長といった肩書も持つ.自らの体験をふまえ,そしていろいろな資料・写真を交えて新町川と助任川の変化を語ってくれた.そのリアリティは圧巻.まるで,生き字引き.

コミュニケーションを「想いの交換」と表現してたのが印象に残った.

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3)稲飯幸代(徳島大学大学院先端技術教育部 D2) アカテガニを利用した城山の環境学習―内町小学校の環境学習から

稲飯さんは僕の研究室の社会人ドクター.昨日の練習では2度のダメだし.夜9時の2回目のダメだし以降,朝5時までかかってスライドを作りなおしたという.その熱意と根性には頭が下がる.

子どもたちがアカテガニを探し,その住み場所の特徴に気づき,住み場所としての森の機能を理解していくために,稲飯さんが用意した「しかけ」と,それに導かれた子供の活動との相互関係をわかりやすく説明した.発表の声は緊張でうわずっていて,聞いていた僕の胃もギューっと収縮してしまった.

昨日と比べて格段に向上していて,高麗先生からはいい発表だったとおほめの言葉をいただいた.会場に来てくれていた内町小学校の校区内のまちづくり協議会の方や,城山城址を愛する会の方々が,次は自分たちもやってみようと思ってくれたらいいのだけれど..

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4)田代優秋(徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 特任助教) 新町川・助任川の水中探検―魚の目線でみたらどう見える?

田代さんは主に用水路の魚の生息地修復に関する研究を続けている若手研究者.農家の目線で保全を考えようとしている.僕の研究室の運営も手伝ってくれている.

今日は魚の目線で,川をとらえるという試み.このシンポジウムのために徳島市内の何ヵ所かの川にでかけ,CCDカメラを使って水中撮影.川の汚れを視覚的にとらえ,また,川の中でのカニやフジツボの営みを垣間見えるリアリティを伴う表現,面白かった.田代さんのプレゼンテーションのセンスは見習うところが多い.

四国放送から共同取材の申し入れがあったとのこと.具体的な活動に結びつけていくという,今回のシンポジウムの目標達成につながりそう.

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5)水上雅晴(貝の資料館&漁師さんの水族館・もらすこむぎ 館長) 水族館でまちづくり

水上さんは,県南の牟岐で漁師さんと協働して「採る漁業」から「見せる漁業」への展開を図ろうとしている.漁に出ていない漁船を使ってダイバーをダイビングポイントまで運ぶという仕事を仲介したり,漁で網にかかるのだけど雑魚として捨てられていた魚を水族館で展示してしまおうとしたり(“漁師さんの水族館”の由来).地域内に眠っているものを掘り起こして,「地域資源化」してしまうところが,すごい.

水上さんとは,「みなみから届ける環づくり会議」でも一緒に仕事している.一緒に仕事をして,元気をもらえる方の一人だ.

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今日の僕の役割はNPO理事長として開会挨拶と,総合討論の進行.

総合討論では,会場に来ていた年配の方から新町川や助任川の思い出が続出.世代によって見えてた風景の違いが浮き彫りになって楽しかった.高度成長期前のきれいな助任川を見て遊んでこと,僕が子供の頃にみた助任川は汚くて,水質浄化のための取り組みの真っ最中だったこと,そして水質改善が進んで魚がかえってきた助任川を見ている若い世代.これから何を共有し,何を伝えていくべきか..

 

シンポジウムが終わってから,みんなそれぞれに何か考えてくれていたら今日は成功と思っていたら,打ち上げの飲み会をしている場で,郡さんから今度は新町川の川辺でシンポジウムをしようとの提案.いろんなアイディアをさかなに,楽しい酒をのんだ.ビルの壁をスクリーンにしよう,会場の設営費は会場周辺のビールや飲み物の販売で,田代さんの水中実況中継,四国放送との共同作品の放映,最後に花火を... 

新町川・助任川の生態系修復とまちづくり.夢が広がるシンポジウムとなった.皆さん,ほんとご苦労様でした.

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2008年9月25日 (木)

人工海浜 沖洲マリンピア

ルイスハンミョウの代替生息地として創造されつつある人工海浜を案内してもらった.植生の管理目標を考えることが目的.海浜植生を専門とする澤田さん(兵庫県立大・淡路景観園芸学校)にも同行してもらった.

当初,この浜全体に海浜植生を成立させることが考えられていた.そのため,近隣の砂浜の植生をイメージし,ある程度のゾーニングをした上で,埋め立てで消失する浜から海浜植物が移植された.コウボウシバ,コウボウムギ,ケカモノハシは,波や強風によって表層の砂が激しく動く場所で生育している.一方,ルイスハンミョウは,台風のようなときにも波があまりおしよせない静穏な浜に生息していて,人工海浜はそのように設計されている.

安定環境を好むルイスハンミョウ vs 変動環境を好む海浜植物.

この人工海浜の目的はルイスハンミョウの生息を支えることだから,この浜全体で海浜植物を生育させることは難しい.おまけに砂が周囲に飛び散って近隣に住む人に迷惑がかからないように防砂ネットを設置したため,表層はますます安定した状態となっていた.

今,この浜のほとんどはオオフタバムグラ,コマツヨイグサ,ヒメムカシヨモギなど,いわゆる荒地に生育する外来種で覆われている.当面は,これら外来種をどのように取り除き,在来の植物の生育を助かるかが課題.まずは,防砂ネットを撤去すること,そして,広い面積を占める安定帯ではハマゴウが優占するようになることを目標とし,それが育つまでの間はチガヤを導入するなどして高茎の外来種をはいりにくくすること,塩水に弱いオオフタバムグラを除去するために,その繁茂が特に激しい場所には海水を散布することなどが話し合われた.コマツヨイグサはがんばって抜くしかないのかもしれない.

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 ↑ 人工海浜

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 ↑ オオフタバムグラ,コマツヨイグサ,ヒメムカシヨモギで覆われた安定帯

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 ↑ コマツヨイグサ.なんだかアンデスとかヒマラヤの高山にはえるクッションプラントみたい.

陸上部は外来種の世界となってしまっているのだけれど,汀線には種が流れてきて自然に侵入したと思われるコウボウシバが定着している.また,干潟ではたくさんのハマシギが餌をついばんていた.餌となるベントスも豊富になってきているということなのだろう.吉野川の自然干潟を超えるくらいの密度の鳥たちが過ごす場所となっている,というのが去年の委員会でも報告されていた.ルイスハンミョウという種をターゲットにして構築されてきたこの浜の水際から水域の領域には,良質な生態系ができあがりつつあるのかもしれない.

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 ↑ 自然に侵入してきたと思われるコウボウシバ

工事中であるため人の立ち入りが制限されているこの浜は,野鳥にとっては静かにすごせる楽園となっていて,それを近くで観察できる場所となっている.このような状態を将来にわたって維持していくための管理や利用方法を考える時期にきている.

これから先,人の立ち入り制限が解除されたときに起こるかもしれない悪循環のシナリオ.1)5月の連休のころには潮干狩りでごったがえし,ルイスハンミョウの巣穴が踏み荒らされ,ルイスハンミョウがいなくなってしまう.このようなことが起こりうることは,前回の委員会で報告された(こうなってしまった場合,この事業の意味そのものが失われる).2)シギ・チドリなどの野鳥は,この浜を使えなくなる.シギ・チドリは,餌となるベントスを食べて栄養を蓄え,また飛び立っていく.このことは,静穏で閉鎖的な水域に蓄積する有機物の除去に役立っている.3)シギ・チドリのいなくなった水域は富栄養化がすすみ,底質はヘドロ化する.4)外来種におおわれた荒地だけが残る...

生態系サービスをうまく使い続けられるようにすること,そのための知恵を出し合う場をつくり,合意形成していくこと.自然再生を考えるときには,そうしたプロセスをデザインする能力が必要だというのは,先日,博多で行われた学会(ELR2008)の公開シンポジウムで議論されたことだった.これからマリンピアの人工海浜では,それを実現できるかどうかが試される.

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2008年9月23日 (火)

博多 ELR2008 後記 おいしかったもの

博多でもいろいろ食べた.

19日(金)は伊東さんの出迎えで,貝料理ともつ鍋.博多駅周辺.もつ鍋は,20年くらい前に博多で食べて感激した覚えがある.貝料理の専門店というのは初めてだったけど,うまかった.もつ鍋はしょうゆ味とみそ味の2種類を食す.これまたうまかった.

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満腹になった状態で中洲に移動.川沿いのバーでカクテルを少し.リンゴを刻んだものにいくつかのリキュールをまぜてシェークしたようなもの.名前は忘れたけど,その味は舌にきざまれた.おいしかった.

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21日(日)は懇親会のあと,ELR2008の実行委員会事務局を務めてくださった原田さん(西日本技術開発)を誘って慰労会.以前に学会で一緒に働いた島崎さん(いであ),石井さん(リバーフロント整備センター),伊東さん(九州工大),ポスター賞を受賞した大石さん(九州工大)と研究室の源,武知,竹村.

原田さんの働きがなければ,この大会は成功しなかったと思う.本当にご苦労様.慰労会中に述べた学生たちの感想,「うれしかった」という言葉を聞けて原田さんも報われた感じがすると,うれしがってくれていた.人をよろこばす,よろこび.酒と一緒にはらわたにしみる.島崎さんおすすめの,ごま鯖等を食す.

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博多の夜のしめは,やはり屋台.おでん,やきとりにビール,そしてラーメン.

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金沢から博多.お腹も気持ちも飽食の一週間.忙しかったけど,楽しかった.

ちなみに,学会期間中は飲んでばかりいたわけではない.

20日 景観生態学会企画交流委員会(9時~10時15分),応用生態工学会編集委員会(10時30分~11時30分),景観生態学会運営委員会(11時30分~12時40分),研究発表(12時50分~18時),自由集会(18時~20時)

21日 LEE(Landscape and Ecological Engineering)拡大編集委員会(8時15分~10時).研究発表会(10時~12時),景観生態学会総会(13時~14時),研究発表会(14時~18時).

22日 公開シンポジウム「自然再生の課題と展望」(9時~12時).景観生態学会の幹事長として,パネルディスカッションに参加.他のパネリストには江崎さん(応用生態工学会幹事長/兵庫県立大)と小林さん(緑化工学会副会長/千葉大)と桑子さん(東京工大).

柴田さん(緑化工/京都大)の「竹林・里山管理に関する研究と課題」,関島さん(応用生態/新潟大)の「トキの野生復帰を実現可能にする自然再生の手続き」,山根さん(景観生態/神奈川県自然環境保全センター)の「丹沢山系における自然再生の試みと課題」,桑子さん(東京工大)の「自然再生の社会的課題」についての基調講演を題材に,島谷さん(実行委員長/九州大)の進行でディスカッションが行われた.どれも面白い発表で,実現可能なプランを描く過程での景観分析の重要性と,合意形成が重要であることが共通していた.僕は,国土の広域的区分にもとづく戦略的な自然再生の必要性と,プロセスをデザインするというアイディアを話し,コメントにした.

会場からは橘川先生(クイーンズランド大)をはじめ,いろいろな人から前向きなコメントと質問.終わった後も,ぜひ来年もこのようなシンポをという声がよせられた.みんな楽しんでそして何かを得てくれたようでよかった.これで,金沢から続いた1週間の仕事の肩の荷がおりた.

これから里地里山SGAの枠組みを確立していくための宿題を果たしていかなければならない.肩にのしかかる課題.がんばろうっと.

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2008年9月21日 (日)

博多 ELR2008 研究発表 (2) 祝! ポスター賞

ELR2008,2日目.

今日は,武知,荒木田,竹村が発表.

1)武知宏弥・鎌田磨人.出猟カレンダーを用いたニホンジカの分布拡大予測モデル.

徳島県で個体数が急増し,人工林や自然林に被害を与えているニホンジカを管理していくための基礎資料の提供をめざして,出猟カレンダーから分布拡大予測を行おうとするもの.

この発表もかなり刺激を与えたようで,2時間ほどの発表時間の最初から最後までずっと聞き続けてくれた人もいたとのこと.

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2)三橋弘宗・荒木田葉月・鎌田磨人.内湾度を定量化する方法.

DEM等のデジタルデータを用いて湾を任意の空間スケールで定義し,自動抽出するための新しい手法を提案.三橋さん(兵庫県立大)らしい,人を魅了する味のある発表.

この発表を聞いた何人かから,とても面白そうで役に立ちそうだけど,よくわからんとの質問を受けた.「内湾度」という言葉も,もう一つではないかとの指摘も.人の感覚で認識されアナログ的に定義されてきた空間を,デジタルで抽出・定義することの意味や,地形区分のスケール依存性とその階層性が持つ意味をきちんと伝えることが必要だと感じた.この説明では難しいか..

3)荒木田葉月・三橋弘宗・鎌田磨人.内湾度からみたシギ・チドリ類の渡来地の評価.

シギ・チドリが多数飛来する場所の地形的特徴を,内湾度を用いて明らかにし,渡来地を予測する手法を提案.とても高い予測精度が得られている.

フィールドワーカーとして長く鳥の調査を続けてこられた山岸先生(山階鳥類研/応用生態工学会会長)からは,フィールドで得られるデータとどのように整合させるのかといった,質問.このような質問は,ボトムアップ・アプローチとトップダウン・アプローチの違いがもたらすもの.地形データで,渡り鳥が集まりやすい場所を広域的に予測できるけれども,なぜそこがいいのかはサイトスケールで行うフィールドデータがないと説明できない.どちらも大事で,相補的な関係になる.それがマルチスケール・アプローチだ.

4)竹村紫苑・荒木田葉月・三橋弘宗・鎌田磨人.内湾度を用いたマングローブ林の潜在的生育地の推定.

内湾度シリーズの最後は,西表島と石垣島を対象にして,マングローブ林が成立する場所を流域の特性を表すパラメータを用いて予測しようとするもの.2つの空間スケールで抽出される湾と,流域面積,そして河口・海岸付近の傾斜を用いることで,かなりの精度を持って予測可能だという結果.スライドもきれいで,堂々としたいい発表だった.緊張でレーザーポインターで指す光がスクリーン上でブルブル震えているのも初々しくて,よかった.

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夜は懇親会.単独の学会大会では味わえない賑わい.山岸先生(応用生態工学会会長)から声をかけられ,大会の成功にこぎつけるまでの苦い話を少しと,内湾度についての話を少し.山岸会長も,この大会を楽しんでいてくれているようでよかった.あと,いろいろな人から次々と声をかけられて,情報交換.

懇親会の席で,ポスター発表の中から優秀賞の12人(各学会4人ずつ)が発表された.僕らの研究室の源さんが見事獲得sign03 「ポスター賞をとろう」を合言葉に解析とポスター作りに取り組んできたその目標を達成.8月の合同ゼミで発表してくれた九州工大の大石さんも同時に受賞.すごいなあ.ほんとうにおめでとう.

この2人は景観生態学会からの選考で,あと2人は中村さん(北大)の研究室の学生さんと,増澤さん(地域環境計画).僕と中村さんがデヘデヘ笑いながら写真を撮り続けるのを見た周囲からは,二人ともまるでお父さん(おやじ)との声が...

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みんな初めての学会発表だったけれど,他の人の発表からも刺激を受け,ほんとに充実した楽しい時間を過ごしていたよう.僕もうれしかった.

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ポスター賞に関しては,選考委員長を務めてくださった伊東さんも記事にしてくれてる.

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2008年9月20日 (土)

博多 ELR2008 研究発表 (1)

福岡大学でELR2008.9月20日~22日まで.

ELR2008は,自然の保全や再生に向けた応用研究を行っている研究者や技術者が所属している応用生態工学会景観生態学会緑化工学会の合同大会.3学会連携による初の試み.

僕たちの研究室から,荒木田(D2),竹村(M1),武知(M1),源(B4)が参加・発表

20日は,僕と源が発表.

1)鎌田磨人・平井壮.河床変動パターンに基づく砂州上植物群落のポテンシャルハビタット評価.

国土交通省が蓄積している定期横断測量資料と河川水辺の国勢調査による植生図を用いることで,日本の一級河川でのモニタリングシステムを構築し,河川の再生目標づくりに役立てることができる,という提案.去年の平井の卒論.みんな興味を持ってくれて,質疑応答にも熱がはいった.

2)源典子・鎌田祐輝・鎌田磨人.ジンリョウユリ個体群の構造と光環境.

徳島県の絶滅危惧種であるジンリョウユリの開花や成長に必要な光環境を見いだし,その環境を作り出すための管理方法を提案.源らしい,素敵なポスターに仕上げた.

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夜(18時~20時)は自由集会,「比較景観生態学手法にもとづく里山評価システムの開発」,夏原さん(京大)の科研や里地里山SGAに関連する企画.

夏原さん,藤原さん(兵庫県立大),岩田さん(京都大・院生)の発表に続き,最後に僕が話題提供.準備がおいつかず,前3人の発表を聞きながらスライドを作成するはめになった.金沢から,この綱渡り状態の連続.

博多での学会に先立って金沢で開かれた,里地里山SGA・インタークラスター会議で考えた里山の評価手法を紹介し,そして,今後のとりまとめ方針を提案.自由集会の会場にいた何人かには,その場で執筆依頼等を行ってしまったので,何人かを不安と混乱に陥れさせたかも..

その後,森本さん(京大),夏原さん(京大),柴田さん(京大),今西さん(京大),中村さん(北大),森本さん(北大),伊東さん(九州工大),伊藤さん(宮崎大),菊池さん(広島大),須崎さん(矢作川研究所)や,学生たちと懇親会.小串さんが幹事を務めてくれた.

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2008年9月19日 (金)

京都 朱雀の庭・いのちの森

金沢から博多への移動の途中,京都で一休み.京都駅の近くにある朱雀の庭・いのちの森に立ち寄った.

「朱雀の庭」は平安建都1200年を記念して作られたという,モダン・ジャパニーズの庭.そんなに広くないのだけれど,水・丘・流れの組み合わせを,いろんな視点場から眺められるように作らてていて,とても広く落ち着いて感じられる.

庭の中に「野筋(のすじ)」がある.丘の合間をぬうように蛇行した水路が池につながっている.平安時代からの技法らしい.徹底的に管理された造りなのだけれど,とても自然を感じる.日本の里地・里山の風流.

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「いのちの森」は「朱雀の庭」に続く野生の空間.もちろん植栽されたものだけれど,林内の樹木は周辺の野山で生育している樹種で多様.樹木を上から眺められるように空中回廊の木道も作られている.きっと植栽初期に作られたので,今は森の中に取り込まれ当初の意図から少しずれてしまってるよう..

池には絶滅危惧種の保護・増殖を兼ねて,オニバスなどを育てようとしているという.でも,ザリガニにやられて悲しい状態..

いのちの森で見せようとしている雑木林は移り変わる自然の中途段階の森.そういう中途半端な自然を管理していくことの難しさを教えてくれる.

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徹底的に管理された中で感じる自然と,自然状態の管理の中で感じる不自然.そのアンビバレントな面白さ.とても気になる空間だ.

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2008年9月18日 (木)

金沢 里地里山SGA

16日から18日まで里地里山サブグローバルアセスメントの実施に向けた会議。金沢にて。会議の議長は、Anantha Kumar Duraiappah博士と中村浩二金沢大教授。Ananthaさんはナイロビ(だったかな)から来ていて、ミレニアムアセスメントを行ってきた実績を持っている。

これは、国連の呼びかけで世界中の研究者が実施してきている生態系ミレニアムアセスメントの続きで、日本の里地里山の状態について、「生態系サービス」を軸にして評価しようとするもの。北海道、東北、北信越、関東中部、西日本の5つのクラスターにわかれて、それぞれの地域の里地里山の状態の評価に取り組む。西日本クラスターでは森本先生(京都大)と秋道先生(地球環境研)のお二人がヘッドとなって、景観生態学会、西日本草原研究グループ、瀬戸内海研究会議の3つの組織が協力して陸域生態系と瀬戸内会について記述していく。

16日は、一日をかけてそれぞれのクラスターから取りまとめ方針が示され、意見交換を行った。それぞれの地域の研究者の考え方の違いが反映され、それぞれに面白かった。けれども、評価手法がそれぞれに異なっているのは困るというのが、Anantha議長の考えだったのだろう。もっともだ。

17日の個別クラスター会議で、執筆方針を再度検討することに。Anantha議長は僕たちの西日本クラスターにはりついて、強い助言を与え続けてくれた。もともと、西日本では、それぞれの研究者が得意とする生態系そのものに焦点をあてて、タイプ別に記述していく方針であった。Anantha議長からは、そうではなくて「生態系サービス」に焦点をあてて記述していく方針に変更するようにとのこと。

議論を重ね、知恵を絞り出した結果として、西日本(特に陸域)は以下のような方針で記述していくこととなった。

1. 里山と里海(瀬戸内海)の2つのグループに別れて執筆を進める。

2. 里山グループは生態系タイプごとにサブグループをつくり、それぞれにサブリーダーを決める。主な生態系タイプは次のとおり。アカマツ林、海岸クロマツ林、照葉樹二次林、広葉樹二次林、ブナ林、人工林、竹林、都市緑地、農地(水田、棚田、畑、果樹園)、琵琶湖、ため池、用水路、草地(放牧地、採草地)。

3. サブリーダーを中心として、それぞれの生態系タイプで注目すべき生態系サービスをとりあげ、それについて記述する担当者を決める。注目する生態系サービスは、供給サービス(木材、食糧[動物性、植物性]、非木材[かや、炭、きのこ、竹の子など]、水、薬)、調整サービス(炭素固定、水質浄化、大気浄化、気候緩和、土壌侵食防止、水源涵養、斜面固定、洪水緩和、防風・防潮)、文化サービス(教育、文学・アート、伝統文化[盆花、敷き松葉]、昆虫採集、エコツーリズム、景観)

4. 担当者は生態系サービスに主眼におきながら、1)生態系タイプの高度経済成長期までの利用について論じる。2)担当する生態系タイプの生態系サービスやその人間との福利との関係を評価する方法・ツールを示す。3)そして,生態系サービスの現況と傾向,変化をもたらした要因,これまでの対応(主に政策的対応)の評価と今後の政策提言について論じる。

5. サブリーダーは個々の著者の報告をまとめ、CLA(とりまとめ者)に提出する。

6. CLAは各グループから集められた結果をもとに、個々の生態系で取り上げられた生態系サービスを横断的に整理し、生態系間のつながりを考慮しながら生態系サービスの変化や福利との関係について取りまとめる。なお、これにおさまりきらない事項については、個別に執筆を依頼する。

今回の会議、僕は一執筆者として参加したつもりだったけれど、とりまとめ役の夏原さん(京大)が別の会議で海外出張中とのことで、急遽、取りまとめ役となった。17日は、白川さん(芸北・高原の自然館)、小串さん、朱宮さん(日本自然保護協会)に手伝ってもらいながら、夜中までかかってとりまとめ方針と執筆要領の原稿を作成した。

18日。再び全体のクラスター間会議。17日に検討された執筆方針について発表し、互いに意見交換と調整。さすがに今回は、それほどの不整合もなく、方針そのものは合意された。でも、これだけの作業を2009年の1月までにやらなければならない。気が遠くなりそう。。

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 ↑ クラスター間全体会議

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 ↑ クラスター会議

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 ↑ 武家屋敷であった場所を借りきっての懇親会(16日)。今は久谷焼きの博物館となっていて、久谷焼きが展示され販売もされていた。額は1桁か2桁違っていて、お酒を飲むのもひやひやした。。

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2008年9月15日 (月)

金沢 うまいもの

18時 金沢着 16日から里地里山サブグローバルアセスメント(里地里山SGA)に向けたインタークラスター会議。

北大の森本先生、近藤先生とホテルのロビーで出会った。一緒に夕食を食べに行くことに。当然、魚。近藤先生とは初対面だったけど、とても気さくで楽しい先生だった。以前、富山にもいたことがあるそう。造園学会が主な活動の場とのことで、里地里山SGAにかかわるようになったいきさつや、北海道での動きなどうかがった。

ノドグロ、ハタハタ、シメサバ、白エビ。うまい! 脂がのっていて、それでいてあっさりした感じ。当然、金沢の酒。うまい!

19時30分 長野大の佐藤さん、合流。当然、魚と酒。。

20時 北大の先生方といれかわって、芸北自然史博物館の白川さんが合流。白川さんは僕の大学の後輩でもあるけれど、広島の芸北で草地再生のための活動をプロモートしているキーパーソン。いろんな人をよびこんで、ネットワーク化し、活性化している。佐藤さんと僕たちで行おうとしている「地域主導型科学者コミュニティの創生」を考える上でピッタリの方。日ごろの活動や、それを支える白川さんの考えなど、楽しく話す。

22時30分 魚と酒と話を堪能し、ホテルへ。酔いもまわってる。

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2008年9月13日 (土)

普遍性・地域性のスペクトラム

JST(科学技術振興機構)に共同で申請していた研究が採択された。長野大学の佐藤さんをヘッドとする「地域主導型科学者コミュニティの創生」という研究課題。

「地域社会の環境問題解決への取組の中で、地域社会に常駐するレジデント型研究機関・訪問型研究者・ステークホルダーの相互作用を通じて、科学者が問題解決型に変容しつつある実態を把握する。科学者とステークホルダーが参加する“地域環境学ネットワーク”を形成して、ステークホルダーと科学者の協働のガイドラインと、ステークホルダーが参加する科学研究の評価手法を構築し、地域社会による主体的な問題解決への貢献を使命とする科学者コミュニティを創生する」のが目的。

科学者・研究者が、地域の環境課題を解決するために、地域の人たちとどのような関係を構築しながら、どのようにして研究を進めていくべきなのか、また、その“研究成果”はどのような形で誰に評価されるべきなのかというようなことを、それぞれの地域にはりついて研究を続けている人たちや、活動を展開している人たちと議論して、整理しながら道筋を示していく。その過程で、地域間のネットワークも構築していこうとする試み。

科学のための科学(Science for Science)だけでは、社会的問題は解決しない。社会のための科学(Sicence for Society)が求められている。真理・普遍性と個別・地域性、知的欲求と社会貢献、ロマンと現実、研究と実践。研究者のスペクトラムの両端にあるこれらをいかにつないで、より大きな科学論を提案できるのか。しりごみしそうなほど壮大で、わくわくするテーマ。未知な中を手探りで歩んでいく楽しみ。

佐藤さんとは、JICA研究プロジェクトマラウィで仕事をしたとき(1998年~2001年)からのつきあい。その期間、強烈な個性とリーダーシップに圧倒されてた。今回も、佐藤さんをはじめとして、個性的な人たちが研究グループを構成している。どのような相互作用が生じ、何が生みだされるのか。

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2008年9月11日 (木)

産官学民

徳島県南部総合県民局の古川さん、小西さん、小川さん、細川さん、阿南高専の橋本先生、大田先生と打ち合わせ、17時30分~20時まで。「みなみから届ける環づくり会議」のイニシアティブで8月4日に行った、徳島県南域の流域一斉水質調査について。

この調査は、阿南市の小学校や中学校、南部域の住民500人程度の参加を得て、河川や用水の水質を一斉に測ってみようという試み。環づくり会議のワークショップで抽出した解決すべき課題のひとつが、徳島県の中で最も水質が悪いといわれている打樋川の水質改善。それを行うためには、川が汚れていることにみんなが気づくことが大事、ということで行われた。パックテストを使ってCODとpHを測定した。環づくり会議に参加している日亜化学、王子製紙、大塚製薬ワジキ工場、日本電工は、人と機材を提供してくれて精密な水質調査を行い、パックテストの精度を補完。

僕らの研究室の田村くん、田川くん、梅平くんの3人が8月いっぱいかかって調査結果をGISに入力し、地図化した。その地図をどのようにして住民に還元し、次のプロセスにつなげていくかが、打ち合わせの内容。

新聞への折り込みを使って水質地図を県南域の全世帯(4万戸程度)に配布し、それぞれが住んでいる周辺の水の状態を眺めてもらい、そして、冬に予定されている2回目の調査への参加の動機づけに使うことになった。これが「気づき」のきっかけになり、水質改善のために何ができるのかを、みんなで考えることにつながっていくことを期待。

この調査が実現したのは、阿南高専の橋本先生、大田先生や、南部総合県民局の皆さんの努力の賜物。頭が下がる。予算ゼロから始まったこの活動だけど、このような努力が認められ、少しずつ助成金ももらえるようにもなってきた。本当の成果が見られるのは、まだ先のことだけど、「みんなで何とかやってみよう」という気持ちの環がつながり広がっていくのを感じられることは、とても楽しく幸せな気分にさせてくれる。

産官学民の協働による環境修復やまちづくり。最近、枕詞のように使われるこのフレーズだけれど、その実現に向けては、将来の活動をみとおしたしっかりしたプランと、根気と、楽しみが必要だ。

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2008年9月10日 (水)

助任川と城山

助任川(すけとうがわ)という川が,大学の前を流れている.海水が流れ込む汽水域だ.この川に接するように,城山がある.徳島市の真ん中にある小山で,名前のとおり,江戸時代には徳島城があったところだ.国の重要文化財に指定されている.

明治になって城があけわたされて以降,その小山は利用されてこなかったため,斜面には立派な森林ができている.ホルトノキやクスノキ,エノキやムクノキの大木がある.そのため,ここは徳島市の天然記念物に指定され,また,環境省からは特定植物群落にも指定されている.

けれども最近,ホルトノキがどんどん枯れてきている.あと,15年もすればなくなる可能性があり,森林再生のための植樹等が必要なのではないかというのが,僕たちの研究室で修士論文を書いた久戸瀬の結論.そのような声は,城山の自然を愛する市民からも出ている.一方,史跡としての重要性を優先する人たちからは,木を植えたりすると石垣が壊れるかもしれないから,そんなことをするのはもってのほか,という声も.どちらも城山を愛する人の声なのだけれど,やり方をめぐっては対立が生じる..

アカテガニというカニも,城山の住人.このカニは,普段は城山の森の中にある石垣に住んでいる.そして,夏の大潮の日,助任川まで降りてきて子どもを産む.子どもはしばらくの間(1か月くらいか?),汽水域をただよい(そのときはいわゆるカニとは違う形をしている),カニらしくなってきたころ城山にあがってくる.大人になってもカニはカニ.エラ呼吸をするので,乾燥には弱い.森が湿度を保ち,石垣が隠れ家を提供することで,このカニは生活史をまっとうできる.

アカテガニは,海-川-森,そして石垣をつなぐ,象徴的な生きものだ.そんなカニを環境教育に利用しながら,城山の森と石垣の大事さに気づいてもらい,森も石垣も守っていける方法を考えようとしているのが,城山の保全に燃えて研究室にはいってきた社会人ドクターの稲井さん.7月に城山のふもとにある内町小学校の子どもたちに,アカテガニを観察する授業を行った.その時の子どもたちは,とても活き活きしていた.

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そんな様子を,稲井さんが,NPO法人徳島保全生物学研究会が開催するシンポジウムで発表する.このシンポを企画した八木先生(徳島大名誉教授)も,助任川や新町川のよさを伝えたいと熱く燃えている.皆さん,ぜひ,シンポに参加してください.

「sympo_shinmachi_riv.pdf」をダウンロード

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第2回 新町川・助任川シンポジウム
―みんなでつくろう,川のにぎわいを―
このシンポジウムでは,徳島の川の生態系,生物の多様性,伝統と文化がただよ
う水都づくりへの熱い想いを語ります.
そして,美しい水辺に人が集い,人と生き物たちとが交流し,新町川・助任川の
魅力が市民に定着していくために必要なことをみなさんと議論したいと思います.
	日 時 2008年9月27日(土) 13時30分~17時
	場 所 徳島大学工業会館 2Fメモリアルホール
	http://www.e.tokushima-u.ac.jp/Access/0-access.html
	参加費 無 料
	主 催 NPO法人 徳島保全生物学研究会
		Tel:080-3163-7495
<<講演題目>>
開会挨拶 
 13:30	    鎌田 磨人(NPO法人徳島保全生物学研究会 理事長)
~座長 八木静夫~
 13:35~13:50 新町川とまちおこし
		郡 賢治(遊山箱倶楽部 事務局長)
 13:50~14:25 助任川・新町川に緑を-水辺とのコミュニケーション-
		森本 康滋(NPO法人徳島保全生物学研究会 評議員)
 14:25~15:00 アカテガニを利用した城山の環境学習
		-内町小学校環境学習から-
		稲飯 幸代(徳島大学大学院先端技術科学教育部)
 15:00~15:20 休憩
~座長 木下覺~
 15:20~15:55 新町川・助任川の水中探検-魚の目線で見たらどう見える!?
	         田代 優秋(徳島大学ソシオテクノサイエンス研究部)
 15:55~16:30 水族館でまちづくり
		水上 雅晴
		(貝の資料館&漁師さんの水族館・モラスコむぎ館長)
総合討論       
 16:30~17:00 パネラー(木下覺・鎌田磨人・高麗寛紀)
閉会挨拶
 17:00		八木 静夫(徳島大学名誉教授)

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2008年9月 5日 (金)

カーボン・オフセット

とくしま環境県民会議」では,環境省の「低炭素地域づくり面的対策推進事業」の補助を受け,県民会議に参加している組織が互いに連携して,低炭素地域づくりに向けた社会実験に取り組もうとしている.補助金を使って取り組むのは1)徳島市をモデルとした自然再生型カーボンオフセットの可能性についての調査と,2)低炭素型交通システムの導入可能性調査(公共交通機関やパークアンドライド・システムへの移行可能性調査).これらを足掛かりに,県域全体に展開可能な枠組みを模索し,提言していく.

それぞれの組織がその持ち味を活かしつつ,アイディアを持ち寄り,互いにどういう連携ができるかを考えることで,社会的な実現が図れることもある.そのことは,「みなみから届ける環づくり会議」という,県南域の環境課題を解決していくために立ち上げられた協議会を運営する中で学んだ.今,「とくしま環境県民会議」の事務局として社会実験に取り組もうとしているのも,環づくり会議で一緒に仕事をした行政マン.僕はその行政マンによばれて「環づくり会議」で会議長を務めることになったのだけれど,今回の社会的枠組みづくりに向けた取り組みでも彼に呼ばれ,「とくしま環境県民会議」のワーキング・グループである「カーボン・オフセット推進検討会」の議長を務めることになった.

今日はその2回目の会合.実のところ,参加している誰もが(僕も含めて),カーボン・オフセットがどのようなものなのか理解できていない.これから互いに学びつつ,できることを出し合い,それぞれがどのような役割を果たしていくことができるのかを考えていく.僕の役割は,会議長として大きな方向を示し続け,皆を勇気づけ,Win & Win の関係を作り上げるためにどのようにすればいいか,そのアイディアを皆から引き出す手伝いをすること.ワークショップの運営は,その達人である澤田俊明さん([有]環境とまちづくり)にお任せ.

もう一つは,一参加者である研究者として,森林によるCO2固定量や吸収量を算定するための方法を考えること.これに関しては,「千年の森」の仲間と一緒にやっていく予定.どのようにしたらいいのか暗中模索ではあるけれど,今,千年の森で取り組みつつあるモニタリング調査と関連付けながらやっていく.

実際のところ,CO2の固定量や蓄積量を精度高く見積もることはほとんど不可能だろう.カーボンオフセットという政治がらみの話をうさんくさがる研究者も多い.そんな中でもこの仕事をやろうと思ったのは,山村で調査をするたびに,「山をどうにかしたいけどお金にならんから,何ともできん」と悲しそうな顔をして話をする山仕事をやってきた人に会うから.山で暮らしてきた人の話を聞くうちに,「ここまでしか見積もれない」という限界を示しながらも,わかったところまでで枠組みをつくり,オフセットすることで森づくりの資金を得ていくことが,劣化した森林や山村を再生するためには必要だと思うようになった.

単にCO2を固定するだけなら,スギでもヒノキでもOKだろう.でも,これからの森づくりは,自然性の高い広葉樹の森づくりも必要になる.カーボンオフセットの枠組みをつくる際には,どこにどのような森をつくっていくのかというビジョンもあわせて示していかなけば,意味がない.こちらについては,今までの仕事をベースとして論理的なゾーニング手法を提案できるに違いない.僕の本質的な役割は,むしろこちらにある.

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2008年9月 4日 (木)

草原 三瓶山 埋没林

草原を巡る旅,三日目.

10時,草原を離れて三瓶小豆原埋没林の発掘地見学.3500年ほど前の三瓶山の火山活動による火砕流が谷を埋め,当時の森林が埋没された.小豆原に到達した火砕流は木々を燃やしつくさないほどにまで冷めていたため,幹を焦がしただけで森林を埋めた.それは樹齢500年程度のスギを中心とし,ケヤキやクリが混じる森林.

10mほどの地下に見る,過去の大地の動き.3500年前の500歳のスギの香り.過去の森の上に,水田や新たな森林がある.僕たちの生を超越する時間,そのロマン.僕たちはその前に立ち尽くした.

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12時,世界遺産,石見銀山.埋没林のロマンに埋没した僕たちに,ここをゆっくり見る時間は残されていなかった...

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14時30分,出雲大社.

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まずはソバ.

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そして参拝

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みなに幸あれ!

22時,無事に大学に帰着.楽しく実りの多い旅だった.

今回の旅のマネジメントは竹村(M1).料理長;武知(M1),会計;田川(B4),昼食場所選定;源(B4),ギター;松永(B4),ドライバー;宮本(B4),竹村,田代(助教),鎌田.

蒜山でのアレンジメントは野田さん.案内は日置さん(鳥取大学),辻野さん(グランドワーク大山・蒜山幹事長/真庭自然を愛する会代表).

三瓶山でのアレンジメントは井上さん(三瓶自然館).案内は井上さんと高橋さん(近畿中国四国農業研究センター).

皆さん,本当にありがとうございました.

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2008年9月 3日 (水)

草原 三瓶山

草原を巡る旅,二日目.三瓶山.井上さん(島根県立自然館)のアレンジで高橋さん(近畿中国四国農業研究センター)も一緒に案内してくれることに.今日もまた,なんという贅沢.

14時,三瓶自然館に到着.井上さんによる三瓶自然館の案内.企画展で「大化石展」をやっていた.徳島県立博物館の標本も展示されていた.そういえば,この旅のきっかけとなった井上さんの徳島来訪は,この標本の借用だった.

15時,雨がおさまるのを待って,三瓶山を一周する草原めぐり.三瓶山の草原は,放牧地として利用されてきた.畜産業の衰退とともに,遷移による樹木の侵入や植林によって草原は激減.今は一軒の畜産農家が利用しているだけとか.

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 ↑ 人工草地での放牧

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 ↑ 自然芝草地.年数回,刈り取りを続けるだけでできあがる.牛を放牧してもこのような草地にすることができる.向こう側は年に1回程度の刈り取りで維持されているススキ草地.

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 ↑ 高橋さんや井上さんの説明を聞くもの,草地に見とれるもの,さまざま.

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 ↑ スキー場の草地.霧の中.. 右と左で色が違うのは,管理手法の違いによって植生が異なっているから.リフトをはさんで右側は職員の刈り取りによって,左側は1頭/1haくらいの密度での放牧で草地が維持されている.

17時,高橋さんのレクチャー.草原が持つ価値,生物のホットスポット,それを守ろうとする人の活動と人のネットワーク,これからめざすべき方向.現場で長くやってきた高橋さんの実直で説得力のある話.いいなあ.生の草原を見た後だから,学生もいろいろな場面をイメージできてるよう.

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2008年9月 2日 (火)

草原 蒜山

研究室で草原をまわる旅.蒜山と三瓶山.

井上さん(島根県立三瓶自然館)が研究室で三瓶山の草原での保全活動を紹介してくれたことがきっかけ.ぜひ,現地を見に行きたいという竹村(M1)の発案で出かけることになった.竹村を中心に打ち合わせを繰り返し,草原の保全活動が行われている蒜山にも寄るることに.蒜山での案内は,徳島でシンポジウムを開催した時に来ていただいてからの知り合いの野田さんに依頼.

8時30分に大学出発,昼過ぎ蒜山着.前日の「グランドワーク大山・蒜山」のミーティングで野田さんと一緒だったという日置さん(鳥取大学)と,辻野さん(グランドワーク大山・蒜山幹事長/真庭自然を愛する会代表)が,野田さんとともに同行してくれて草原を案内してくれた.なんという贅沢.

大山隠岐国立公園鏡ヶ成の草原.マツムシソウの出迎え.僕が最も好きな花.残念ながら野生個体は少なくなり,植えられたものだとのことだったけれど.

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ここの草原は,スキー場の周りや湿原の周りを除けば,草刈等の管理を行えていない.そのため,周辺から樹木が侵入し,草原が失われつつある.

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草原の中には湿原もまた多い.土壌が薄く他の植物(特に樹木)が入り込めなかったことが草原の由来なのだろうけど,草原として維持されている間は蒸散量が少なく地表や地中を流れる水の量が多かった(樹木が侵入すると蒸散量が増えて水量は減る).それが,湿原を形成につながったのだろう.けれども,今,草刈等の管理が行われなくなり樹林化が進行しているために湿地も減りつつある.これに土地造成や水路改修が湿原の消失に拍車をかけた.水路を固定すると,全部の水が水路に集まり,湿原を維持しにくくなる.ここでは,環境省が湿地保全事業を行っているものの,成果は芳しくないとのこと.

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 ↑ 日置さんによる草原や湿地の管理・再生についての説明

その後,野田さんと辻野さんの案内で,ジャージー乳牛を飼育しているという牧草地へ.景色はとてもいい.けれども,人工草地で植物の多様性は低い.

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最後は,野田さんの案内で,鳥取大演習林の中に再生された湿地を見たあと,採草地として利用されてきた草地へ.ススキは,かつては農耕地の肥料や牛馬の飼料等として利用されてきた.そのため,農地周辺にススキ草地が維持されてきた.今,ススキは利用されなくなって,草地を管理する意味が失われてきた.それでも,蒜山には広大な刈取草地が残され,今でも維持されている.そこには,フサヒゲルリカミキリといった絶滅の危機に瀕する昆虫が住んでいたりする.その生息地を守るための草原管理も開始されている.

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 ↑ 鳩が原

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 ↑ 野田さんによる草原の管理についての説明

道すがら,辻野さんがいつも野菜を買っているという農家に立ち寄る.トウモロコシやトマトを収穫させてもらい,バーベキューの食材に購入.野菜がなっている様子を見るのも初めてという学生もいて,うれしそうだった.思いがけない楽しみ.「切り身の自然」から「生身の自然」への知覚の転換.

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 うまっ!

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