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2011年1月10日 (月)

第5回 千年の森セミナー

指定管理者・かみかつ里山倶楽部によって進められている、徳島県上勝町・高丸山での森づくりを外部に紹介する、年1回のセミナー。今年で5回目。13時30分〜16時30分、徳島大学工学部工業会間にて。今回のテーマは、「地域活性につながるボランティアによる森づくり」。

今日のセミナーのメインは、「NPO土佐の森・救援隊」の中嶋建造さんによる講演、「C材で晩酌を! 副業型自伐林家のススメ—木質バイオマス利用システム構築は徹底した地域システムで」  。このことについては、本ブログの最後で少し詳しく。

飯山さん(事務局長)、澤田さん(指定管理者代表)の趣旨説明に続き、原田さん(千年の森ふれあい館)から、活動の様子と成果を紹介。年間、5000人以上の利用者獲得をめざして、毎年40以上の行事が行われている。その結果、2010年度は8000人以上の方が高丸山に訪れた。「森づくりの活動とその効果が地域内外に伝えきれていない」のが課題ではあるが、「町外からの訪問者の増加、町内の人々同士が集まる機会の増加、地域内であきらめかけていた森づくりができる希望と喜びの提供、森づくりの新たな視点の提供、森づくりの楽しさの共有といったことをとおして、地域の活性化につながっているのでは」、とのこと。
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森づくりを進めているボランティアグループ「Eternal Forest かみかつ」の畑中さんからの活動報告も。メンバーは芦ノ湖、南会津、赤沢自然休養林など、日本各地の森づくりの場で活動していて、上勝にも遠方からも来てくれているとのこと。

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そして、
建設工学科3年学生は、千年の森ふれあい館を拠点にして行なった、上勝合宿実習の成果を発表。このセミナーの機会に、地域に成果を還元できればとの思いから、毎年、発表の時間を作ってもらっている。
1)再生の到達目標として調査された自然林でのシカ食害による森林の変化について。シカ柵を設置した林分と、そのままにした林分での構造変化の比較。全体的にシカの密度が減ったものの、シカ柵を設置しなかった林分では、ササ(スズタケ)の植被率が1年間で顕著に低下した。
2)上勝の自然や風景を素材にしたカルタ作り。カルタづくりをとおして、学生自らが、隠れた風景の価値を浮き彫りにする。そして、その価値をメッセージとして利用者に届ける。
3)環境教育のための上勝の食材を使ったレシピ開発。食材からフードマイレージを算出したり、生態系の課題を考える。食材そのものを教材化する試み。米粉を生地に使ったピザ、放置されて拡大する竹林から切り出した竹材を芯にして焼いたバームクーヘン、シカ肉のソーセージ。

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中嶋さんの実績に裏打ちされた「高知県仁淀川流域エネルギー自給システム」の話し。150ton/月のバイオマスエネルギーの原材を確保するため、当初、企業等による大規模林産により6割、森林組合等による中規模林産により3割、そして個人経営の小規模林産により1割が計画された。が、地域でアンケートをした結果、「我々は山を捨てたくない、かつてのように林業をしたい」と考えている方が多く、地域の個人林家や森林ボランティア団体を主体とした「小規模林産収集システム」の確立が可能だろうと結論づけた。このアイディアを「高知県仁淀川流域エネルギー自給システム」を統括する委員会で提案したところ、中央からきた林野庁の方、大学の研究者からは一笑にふされたらしい。唯一、高知大の研究者からの後押しを得て、まずは5世帯しか活動していなかった個人林家を、1年後に20世帯まで増やすことを目標にシステムづくりを開始。そして、1年後には50世帯の林家が参加し、必要とされる150ton/月の材を、個人林家だけでまかなえるシステムをつくりあげた。そして、委員会による当初計画は完全にひっくりかえり、小規模林産により必要量の8割をまかない、大規模・中規模林産でそれぞれ1割ずつを得るという方針になっているとのこと。最初に笑った中央の方々は、委員会には出てこなくなったとのオチも。
これが成功したのは、材の流通の要となる土場の管理を、非営利組織であるNPOが担ったこと。それにより、地域の方々が簡単に参入できるオープンシステムとして設計できたこと。そして、地域通貨というしかけも使いながら、地域の人の参入を促したこと。
中嶋さんは、「今の林業界、行政は大規模林産システムに特化した仕組みしか考えようとしておらず、小規模林産を手助けする制度がないのが問題」と指摘する。頷ける。
この社会システムは、今、日本全国に広がりつつある。それは、このしくみが、1)誰も損をするしくみでないこと、2)しくみが簡単で、コピーしさえすればどこでもできること、そして、3)他地域と競合するシステムでないこと、によっている。
こうしたボトムアップによる活動が地域力を高め、日本の森を変えることにつながるのだと、強く感じた。ちなみに、中嶋さんは、僕達が進めているJSTプロジェクトで構築された「地域環境学ネットワーク」のメンバーでもあって、プロジェクトのサブリーダーである家中さんは、土佐の森・救援隊のシステムを鳥取県智頭町に導入しようとしている。

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セミナーの締めは、かみかつ里山倶楽部における森づくりのリーダー的存在、西さんによる挨拶。

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