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2011年6月 4日 (土)

フォーラム 「仙台湾/海岸エコトーンの復興を考える」

フォーラム 「仙台湾/海岸エコトーンの復興を考える―浅海・砂浜・防潮堤・湿地・海岸林・農耕地を一体化する視座」、仙台国際センターにて、 13:00~17:00、主 催:「フォーラム 仙台湾/海岸エコトーンの復興を考える」実行委員会(共催: 東北学院大学、東京情報大学、NPO法人自然環境復元協会、自然環境復元学会)。

 
 『2011年3月11日に発生した大地震と大津波は、東北か ら北 関東に至る東日本一帯に、未曾有の被害をもたらしました。碧く輝く海、子どもらの歓声がこだ まする水辺、多様な生き物が躍動する干潟、緑濃い樹陰が連なる海岸林、そして爽やかな風がわたる田園の変貌は、あまりにも痛々しい風景となりました。
本フォーラムでは、こうした「浅海から浜辺、防潮堤、湿地、海岸林、そして農耕地に至るエリア」を「海岸エコトーン(海と陸が交錯する推移帯)」とみな し、仙台湾に沿った砂浜海岸領域を事例としながら、「今時の悲しみを二度と繰り返さないための復興」を基本理念とした意見交換を行います。』

以下、講演のうち、印象深かった内容のメモ。


◯砂浜の形成史と近年の地形変化  松本秀明(東北学院大)


 仙台平野の砂浜の形 成史 と近年の変化について。 仙台平野とは、阿武隈川からの土砂および沿岸漂砂によって作られた45kmにわたる砂浜海岸。5000年前、2000年前、 700年前、現在の汀線を比較すると、1m/yearで 前進してきたと見積もられる。ところが1970年代と比較すると、100mほども汀線が後退した場所もあった。一方で、堆積が進んだところも。これは、海岸 構造物が設置された沿岸流の上流部では侵食が、下流部では堆積が進んだことによっていて、土砂量としてはバランスされた状態となっていることを示しているようだ。しかし、ダム等の設置によって河川か らの土砂供給が減少しているため、近年は、全体的に侵食傾向に転じていて、今後、汀線がどのように変化するかは不明な状態になっていた。そのような時に被災して、多くの砂浜が流亡した。今後の数年で、津波によって持って行かれた土砂がもどってくる可能性もあるが、どのようになるのか予測は難しい。

◯海岸エコトーンにおける人間活動史 大山弘子(東北緑化環境保全)


 仙台平野の海岸マツ林は、農地を潮害から守るために、伊達政宗の時代から植林されてきたもの。脈々と植林活動が行われてきたが、1905(明治38)年に発生した東北地方大冷害に対して寄せられた義援金を用いて、海岸林造成 が行われた。その活動が地域の現金収入となり、人々を助けた。さらに、1933年の昭和三陸地震による津波被害後、海岸林の防災効果が評価され、再度、資金が投入されて植林が行われた。

 この 地域の海岸マツ林には、背後の農地を潮風から守るという大事な役割があった。また、津波被害を低減する効果についても評価されてきている。それら機能の向 上を図るために、機会あるたびに資金が投入された。そして、それは、危機に見舞われた地域の人々が現金収入を得る助けとなった。

◯潟湖・干潟の生態と撹乱耐性  鈴木孝男(東北大)


 潟湖・干潟の生態系サービスには、気候緩和・洪水制御、水質浄化、稚魚等のハビタット、養殖の場、レクリエーションの場、美しい景観・癒しを与える場、などがある。


 今回の震災の影響で、懸念される事項は、1)干潟は消失し、砂浜になってしまうのか、2)干潟に生息していた底生生物は戻ってくるのか、3)今後、以前と 同じような生態系サービスが得られるのか、4)いくつかの河川では、汽水域が消失しているかもしれない、5)養殖にはどのような影響があるのか、などである。
蒲生干潟では、前浜がとんで海とつながった。現在は、再び砂が寄りつき、干潟としてもとにもどりつつあるようだ。松川浦では干潟部の砂泥は流亡し、 砂礫の浜に変化した。


 海岸マツ林の津波軽減機能が注目されている。しかし、もともと湿地であった場に造られたマツ林は消失し、防災機能は発揮 していないように見える。
今後、早急に必要なことは、以下の事項。1)現状把握、2)地形、生物のモニタリング、3)失われた干潟に戻ってくる底生動物 のソースの確保(無配慮な造 成によって消失する可能性があるかもしれない)、4)生態系の連続性の確保、汽水域の確保・保全、5)内湾や潟湖など波浪の弱い浅海域の修復、などである。

◯海岸エコトーンの植生構造 菅野洋(宮城県環境保全研究所)


 被災した海岸植生の復元・再生が必要。海岸植生は、砂浜→砂丘植生→マツ林と推移する。そして、マツ林内では、内陸に向かって種が多様になる。

◯大津波に対する海岸林の応答 宮城豊彦(東北学院大)


 インド大津波におけるマングローブ林への影響について調査・解析を行なった事例をもとに、海岸林の破壊特性について解説。樹木の破壊型(Dead, Bending young tree, Tilt, Back off, Lie down, Drag up, Washed awy)に類型化した上で、その空間分布を把握することで、森林全体の破壊程度を把握できる。そして、確認された波高に対して、どのようなサイズ(直径) の樹木がどのくらい残存しているかを求めることで、森林が津波に対して耐えうる限界や津波低減の効果を見積もることができる。10mの波では、マングローブはほぼ壊滅状態だった。


 東北での波高は10m以上、速度30km/hに達した。直径40cm以上のものが生残している。流出したマツは根がついているものが多く、これは、モーメント破壊ではないことを示している。一方、モーメント破壊によって折れたマツが、流亡せずにその場に残存しているケース が多くある。樹木の残り方には、地盤高の違いが影響しているようだ。また、地震の際の液状化の状態が流亡状態に影響していると思われる。いずれにしても土地条件をきちんと評価することが非常に重要で、拙速に植栽を進めることが賢明ではない。

◯ 田園・農業からみた海岸エコトーン —防潮林の機能と効果  神宮字 寛(宮城大学)
 宮城の農地136000haのうち約1割に当たる128000haが冠水。加えて、排水機場の損壊、排水路護岸法面の崩壊、分水路・承水路のひび割れなどが起こっている。現在は、緊急用ポンプによる排水を行っている。
 海水・ヘドロ・瓦礫が堆積した水田では、重機を用いたそれらの除去が必要。しかし、重機によって耕盤層まで破壊され水抜けが起こるようになる可能性も大きい。
 農地復旧と海岸林復旧をあわせてすべき。両者10年ほど時間かかるだろうから、時間的には整合性を持って実施できるはず。その際、今までの土地利用ルールを白紙に戻して、ゾーニングを図る必要があるだろう。土地所有権との関係は難しい問題となるが、国による買い上げなども必要になるのではないだろうか。
 地盤沈下してしまった場所の復旧のあり方については、わからない。個人的には干潟等に戻すというのもありだと思う。


◯ コメント 中静透(東北大)

 今回の災害の特徴は、海に面した場で起こったことであり、海に依存して生活してた人たちが被害者であるということ。復興の目標は、そういった人々が、もと どおりの生活をとりもどしていくことだろう。その意味で、海岸エコトーンの復興を総合的に考えることはとても重要だ。その中で、復興の緊急性と生態系の保 全・修復とを、どのように整合させるかが難しい。地域の方々にとって緊急の復旧が必要だ。一方、そのための工事が、将来の地域に必要な生態系サービスを失 わせる危険性を持つ。今回の震災で学んだことは「想定外」が起こり得るということであり、どのくらい土木技術に頼った復興を考えるのかということについて 問うていく必要がある。と同時に、生態系を復活させるにあたっての予測困難性についても考えなければならない。

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 このフォーラムをとおして、僕自身が学び、考えなければならないと思ったのは以下のようなこと。

(1)仙台平野と仙台湾全体を一つの空間単位として、復興・修復のあり方を考えなければならない。


  1-1) 底生動物等は、メタ個体群によって回復が支えられるはず。どこかに残存しているソースから、破壊されたハビタットに再侵入し、定着するだろう。そのため、 まずは、現時点でのホットスポットを見出し、ソースとなる局所個体群が残存する場所の保全を図ることが重要。復旧・復興に伴う海岸沿いの構造物設置が、 ソースとしての局所個体群を破壊してしまうことがないよう留意する必要がある。


 1-2) 沿岸流によって漂砂が集積されることで、破壊された干潟などの回復が進む可能性がある。一方、流域内の河川はダム等で砂の供給が止められていて、土砂欠乏 となっている可能性がある。干潟や浜が、自然のプロセスによってどの程度の回復可能なのか、供給される土砂量や、沿岸流による土砂の挙動等を見積もりつつ 検討しておく必要がある。


(2)海岸マツ林の修復に際しては、微細な起伏等による地下水位の高さや、地盤特性を十分に把握し、評価しておく必要が ある。マツ林内には、ヨシが生育する湿地が分布している。そうした植生自体が土地のポテンシャルを示しており、その土地の特性を人為で無理に偏向させるこ とは、将来の危険性を高める可能性がある。また、そのような湿地には絶滅危惧種も生息している。


(3)マツ林の内陸側、すなわち、古い年代に植林 された林分には、広葉樹が侵入し種の多様性を高めている。それらは、鳥散布種子を持つ樹木で、より内陸の屋敷林や樹林地から鳥が運んできたものであると思 われる。 内陸側に残された屋敷林等をソースとして、多様な種が侵入することを待つということも含め、植栽計画を考える必要がある。最初から多様な種を植え込もうと することは、地域の風土性を損ねることになりかねない。ここでも、仙台平野を空間単位とし、その風土性と、自然の回復力を最大限に活かしていくことを考え るべきである。

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