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2012年2月 4日 (土)

NACS-Jシンポ「みんなでつくる生物多様性地域戦略」

NACS-Jの主催によるシンポジウム「みんなでつくる生物多様性地域戦略」、10時〜17時、フクラシア浜松町にて。全国から150人ほどの方が集まってきていた。
僕からは「市民団体と研究者によるワークショップと提案づくり」と題する発表、徳島での地域戦略の策定過程について。

以下、メモ。

● 渡邊綱男(環境省自然環境局長)
現在24の自治体で戦略策定、54で策定中。黒内松町では、生物多様性祭りを開催し、地域に成果を報告して、地域の人が地域の未来を考えるしくみを作っている。
震災復興では、環境省としては生態系サービスを基礎にした国土づくりを基軸にし、 その旨を「生物多様性国家戦略」に盛り込む予定。
後で渡辺さんと話した際に、徳島の地域戦略づくりにはとても期待している、とおっしゃっていた。その言葉、徳島のみんなに、直接伝えてもらえれば、もっと勇気づけられるかも。何とかチャンネルをつくろう。

● 亀山章(東京農工大名誉教授、NACS-J専務理事)
地域づくりの視点 多様な主体が、「生態系サービスが地域の財産」であると認識し、それを活かしていくこと。
 生態系サービスをどのように見える化するか、が重要。
  ・地域の固有性の評価
  ・自然は歴史的文化財
 そして、エコロジカル・ネットワークの視点

● 中村俊彦(千葉県生物多様性センター・中央博物館・自然保護協会)
白米ごはん vs 雑穀ごはんを例にして、どちらが生物多様性が高いかを問いかけ。生態系サービスの見える化の一例。雑穀ごはんは“多様性ごはん”。

 生物多様性の意義(人間にとっての価値)
  ・生物の価値
  ・人間にとっての価値安定性、可能性
 県戦略策定の3つの視点
  ・地球温暖化と生物多様性を一体的にすえる
  ・多様な人々の生活なりわいの視点
  ・実現可能性
 戦略実現のために、生物多様性センターを設置。

● 河野耕三(宮崎県綾町企画財政課)
綾での46年間の取り組みについて。綾町はの人口は7800人。人口減は一応とまったが、そのために対策補助金をもらえなくなった。
1966年から、自然と共生する取り組みを行なっている。その核となるのが、 照葉樹林文化論を中心にしたまちづくり。森林法に基づき、町有林を「生物多様性保全林」を指針として経営、「自然生態系農業推進に関する条例」の制定、「綾町の自然を守る条例」などの施策や、「酒泉の杜」を設立し、酒造りを生態系サービスの象徴として経済効果も狙っている。現在は、MABのBiosphere Reserveの設定すべく活動しているが、MABに対する認識・理解のなさ、ゾーニングに対する不信感、運営体制・組織など、いろいろと課題もあると言う。キーパーソンは前・現町長で、町民からの理解は余り得られていないというが、ユニークな施策を推進しているこの町、一度、訪ねてみたい。

● 佐野郷美(市川緑の市民フォーラム事務局長)
市川市では、「市民政策提案制度」を持つ。市民が政策提案できるというもので、この制度を全国で5−6の市町村でしかない。市川緑の市民フォーラムが中心となって、エコロジカル・ネットワークの形成を提案し、採択された。
この制度、面白い。

● 窪田達央(長野県自然保護課)
長野県での生物多様性地域戦略についての紹介。「必ずしも政策的・社会的に最適かつ不可欠なものとして提示するものではない」としながら、危機への対応のための選択肢が示されている。これが行動計画にあたるのだろうか。施策体系は、「知る」、「守る」、「活かす」、「広める」、「つなぐ」が基軸となっていて、環境教育の発展版みたくて、わかりやすい。その実現に向けて「信州生物多様性ネットワーク」を設置して、地域連携・協働促進プロジェクトを進める。長野県には環境保全研究所があるため、これと連動させることで、生物多様性センターの機能をもたせようとしているように思う。読みやすさ・ストーリー性にかけたことが、策定上の反省点。ライターの必要性を説いておられた。僕もそう思う。

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● 乙幡千枝実(千代田区環境安全部参事)
千代田区、皇居を中心としたオフィス街での取り組み事例。温暖化対策としては、2020年までに25%削減することを目指していて、環境モデル都市となっている。
都市で、なぜ生物多様性に取り組むか。それは、「人間生活の利便性を最優先にしたまちづくりをこれからも続けるのか」という街づくりへの根源的な問いかけ、そして、「皇居やお濠の豊かな自然に対しての関心の低さに対する反省、そして、「何もしなければ人間にとっても生活し難いまちになってしまう」という、行政の危機感からスタート。そして、千代田区のような課題山積みのところで実現できれば、どこでもできるだろうという考えのもと、戦略では、皇居を核とした生き物のつながりの拡大を目指す。担当者である乙幡さんの熱い想いが伝わってきた。

第2部 パネルディスカッション

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● 道家(NACS−J)
生物多様性地域戦略の策定は目標・ゴールではなく、あくまでツール。同じ思いをもった人をどれだけ集め、ネットワーク化し、そして継続していけるか。うん、そのとおり。

● 中静 透(東北大)
「生態系サービス」は、生物多様性が意識化されていない人に伝えるための言。食品関係、酒関係は生物多様性を理解しやすいはず。もっと巻き込むべき。
Jリーグでは、70%のチームが生物をエンブレムのモチーフにしている。生物多様性の表現。  なるほど。
地域戦略で考えるべき生態系サービスとは、「里山の恵みの新しい考え方」、「固有の生き物をつかった地域おこし」、「固有の文化の継承と発展」、「こどもの発想力」。
生態系サービスを軸として実現していくべきことは、「暮らしや産業、地域文化と生物多様性の関係を明確にできること」、「いろいろな立場の人を巻き込めること」、「地域の全体的な将来像を具体的に考えるようになること」、そして、「生物多様性の主流化」。

●    長谷川雅美(東邦大学)
「環境自治」と「研究者の役割・しくみ」について。長谷川さんは、科学者として地域での主体的な意思決定を志向する市民を支援。これからの課題は、「環境を自治するための科学」を構築すること。

●    奥田直久(環境省生物多様性地球戦略企画室)
COP10で採択された愛知目標に沿った形で各国の国家戦略を見なおしていく。日本の国家戦略も見直し中。地域戦略については、15道県9市で策定済み、27都道府県他で策定中・検討中。
計画をつくることよりもプロセスが大事。どれだけ多くの組織、部局をまきこめるか。

●    藤田卓(自然保護協会)
地域戦略ガイドブックについての紹介。

<総合討論>
Q; 従来の自然保護と生物多様性戦略との違いは?
 A. 中静; 守る → 生態系サービス
 A. 長谷川; 保護すべき場は依然として残る。そうした議論がない場、あるいは終わった場で生物多様性をキーとした議論
 A. 奥田; 「保護 vs 開発」から、「持続可能な利用」への変化。様々な部局が生物多様性のために何ができるかを一緒に考えることが必要。応援できることは何か、参加できるものはなにか。
 A. 藤田; 関わる人の幅が広がる。それぞれが責任を持つ。
 A. IUCNの標語の変化にも、それが現れている。  Conserving biodiversity → Conserving and valuing biodiversity

Q; 生物多様性の普及啓発の方法・効果的な手法は? 無関心層、関心はあるけど行動してない、行動しているが考えてない。。
 A. 中静; 生物多様性を身近に感じない人たちの中にある、身近な生物多様性への気づきの喚起。気候温暖化等をやっている人たちの無理解。論理性を求めるこうした人たちへの説明が最も難しい。頭と心と身体のバランスが重要。
 A. 長谷川; リーダーの中にある関心を戦略に持ちながら、広めていく(保育園・幼稚園での里山活用について、先生に働きかけるお母さん)。
 A. 黒田; 相手の立場にたって言い方・表現を変える。「なぜわからないのか」と、相手のせいにしない。有名な人を使う。AKB、韓流スターなど。。
 A. 藤田; 自分との関係を示す。具体に考える材料。ママ(地域に根付いている人)が大事なのでは。
 A. 道家; 可視化の手法。

Q; TPPとの関係は?
 A. 奥田; 地域の特性を活かすことは重要。グローバリゼーションとは違った方向は必要。TPPとの関係は勉強中。

Q; 区域を乗り越えるには? 区域とは?
 A. 奥田; 行政が作る計画である以上、責任をとる対象として区域が必要。が、その区域内に限定する必要はない。

Q; 目の前のゴルフ場開発を止めるには?
 A. 長谷川; 市民向けの講座をやってきていたところに開発問題が勃発。その講座で学んだ方たちを核に、問題に立ち向かった。距離的に近いところで活動している人や経験豊かな人に相談する。

Q; 商用化することでオーバーユースに陥ることがあるのでは?
 A. 中静; 西粟倉では、林産物をマーケッティングして必要な生産を行っている。森林認証制度にのっかる。認証制度が付加価値につながればいいのだけれど。。 消費者とも一緒に考える必要がある。

Q; 保全・再生につながったことは少ないのでは? アクションをつくる主体は?
 A. 藤田; やろうと思った人が覚悟を決めるしかないのでは。。 また、そんな人を増やす。

Q; 計画・策定に県民参加、その後、アクション部分でも多くの県民参加が得られているのか?
 A. 長谷川; 堂本ismの浸透。県職員が必ずTMに出向いた。弟子をつくってばらまく。
 A. 佐野; 県民提案で戦略ができた。その後、県民会議はチェックしていこうとの動き。堂本知事から森田知事に交代、前知事の方針は引き継がない方針が見えていて、とても問題。

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