学問・資格

2012年11月 1日 (木)

那賀川汽水域のワンド・干潟はなぜ重要かーその機能と存続をめぐって

津波対策としての護岸強化のため、徳島県の那賀川河口域、那賀川大橋の下流左岸側にあるワンドとそこにある干潟が埋められるとのこと、噂で聞きました。県内の専門家に対するヒアリングは行われてはいるようですが、委員会とかは設置されないようです。工事の前には、工法の工夫による対策を十分に行い、最大限の配慮を検討すべきだと思います。
以下、コメント。



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 那賀川鉄橋直下流の砂州には、2003年まではウラギク、ハマサジ、ハママツナ等の塩性植物の大きな群落がありました。2002年に行った調査では、ハマサジ、ハママツナの生育適地は、水あたりが弱いワンド側に限られていることが明らかにされています。2004年の大出水によってハママツナは完全に消失し、その他の群落も大幅に面積が減少しました。ハマサジ、ウラギクを始め、イソヤマテンツキ、シオクグ、ナガミノオニシバ等の塩性湿地植物の群落がわずかに残存しましたが、これらの分布はほぼワンド側に限定されていました。これは、洪水時にも水あたりの弱いワンド部が、これら植物にとってのレフュージア(逃げ場所)になっているからだと思われます(鎌田・小倉 2006)。

 その後、2007年に再調査を行った所、ハママツナの再侵入と、ハマサジやウラギクの分布拡大が確認されました。ハママツナの再侵入は、対象砂州以外から潮汐等によって種子が運搬されてきたことによっていると考えられました。そのため、那賀川汽水域内で種子源となった可能性があるハママツナの局所個体群の分布を調査したところ、今回、工事が行われるワンド部にあったことが確認されました。群落の規模としては大きくはなかったものの、2004年の大出水時にも消失することなかったその局所個体群が、那賀川のハママツナ個体群の存続に非常に重要な役割を果たしていると思われました。
 このように、那賀川汽水域の塩性植物の存続は、メタ個体群構造があることによって担保されていると考えられます。今回の工事によってワンドが消失あるいは劣化するのであれば、それは、那賀川の塩性植物群落の存続に多大な影響を及ぼすと思われます。

備考;
ハマサジ     絶滅危惧I類(徳島県版RDB)
         準絶滅危惧(環境省2012レッドリスト)
ハママツナ 絶滅危惧I類(徳島県版RDB)
ウラギク      絶滅危惧II類(徳島県版RDB)
          準絶滅危惧(環境省2012レッドリスト)

文献:
鎌田磨人・小倉洋平(2006)那賀川汽水域における塩性湿地植物群落のハビタット評価.応用生態工学, 8: 245-261.

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乾隆帝氏(徳島大学ソシオテクノサイエンス研究部、特別研究員[博士(農学)])からの補足情報。

汽 水性ハゼ類の生息環境として見た場合、泥干潟に生息するタイプの種(タビラクチ、チワラスボなど)がまとまって生息しているのは、那賀川水系の中ではあの ワンド部分だけですね。上記のような種は、時々他の場所で採集されることもありますが、ソースはあのワンドであろうと思われますので、ワンドが消失あるい は劣化するのであれば、個体群の維持は困難なのではないかと思われます。

本 来であれば、河床勾配の緩い桑野川のほうに、このような環境が広がっているのが理想的なのだと思いますが、今、このレフュージアを失ってしまうと、将来的 に、桑野川まで含めた那賀川水系汽水域の自然再生を行いたいと思った場合に、大事な生物の供給源を失ってしまうことになりかねないと思います。

ちなみに、似たような環境があるのは県内では吉野川水系、勝浦川水系だけで、そのどちらも面積としては大きくないです。

備考:
タビラクチ    絶滅危惧ⅠB類(環境省2007レッドリスト)
         絶滅危惧Ⅰ類(徳島県版RDB)

チワラスボ 絶滅危惧ⅠB類(環境省2007レッドリスト)

他にも、環境省2007レッドリストでⅠB類が1種、Ⅱ類が1種、準絶滅危惧が2種は少なくとも生息しています。

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2012年3月28日 (水)

大阪市立自然史博物館での標本調査とゼミ

学生の大橋くんと大阪自然史博におじゃまして、標本調査。志賀さんのご配慮で収蔵庫での作業は意外と早く終わった。夕方、自然史博の標本を使って行なった研究成果を、大橋くんが発表。植物プロの方の前での発表は、大橋くんにとっていい経験になったと思う。

ゼミでは、厨子くん(同志社大)の発表も。オグラコウホネの遺伝的変異を地域間で調べたもの。オグラコウホネは、大きくは近畿以西の九州、中国、四国の集団と、近畿の集団に分かれ、ベニオグラコウホネと名付けられているものは、それら二集団のそれぞれに出現するとのこと。とっても面白かった。

ゼミ要旨は、佐久間さんのブログから。

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2012年3月23日 (金)

生物多様性国際自治体会議 準備会

生物多様性国際自治体会議の準備会,22日〜23日、名古屋国際センターにて。10月,インドのハイデラバードで開催される生物多様性条約COP11、そして2010年のCOP10で採択された愛知目標を自治体レベルで支えるための会議。僕は、都市の生物多様性を科学・技術レベルで支えようとする国際ネットワークのURBIOメンバーとして参加。 

“City & Sub-National Biodiversity Summit” が、10月15日、16日に開催されることが決まったとのこと。けれども、インド政府と

Andhra Pradesh & Greater Hyderabad 地方自治政府の共催で行うこと、それをICLEIがプログラム作り等をサポートすることが決まってはいるようだけど、具体的な実行体制はほとんど決まってないみたい。大丈夫か。。

URBIOからは、第3回の国際会議URBIO2012を、10月8日〜12日にMumbaiで開催すべく、Prof. Haripriyaを中心に準備中である旨を報告。そして、インドから来ていた代表者に、URBIO2012と連携していただき、会議成果をインプットできる場を作ってもらえるよう依頼。とりあえず約束はしてくれたけれど、今の準備状況を考えるとどうなるのか不安。

22日の午後には、白鳥日本庭園へのエクスカーションとレセプションが準備されていた。レセプションには名古屋市長も登場。COP10の際に松本環境大臣(当時)が、議事採択の際に打ち鳴らした木槌が、生物多様性条約事務局から名古屋市に寄贈された。その木槌を囲んで、道家さん(NACS-J)や森本先生(京都大)と記念撮影。

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◆ 以下、URBIOへの報告メモ

Third Meeting on the Implementation of the Plan of Action, including a meeting of the Global Partnership on Local and Sub-National Action for Biodiversity and its Advisory Committee of Cities was held at Nagoya, Japan, March 22-23, 2012.

In the meeting, Mr. Sunandan Tiwari of ICLEI stated that “City & Sub-National Biodiversity Summit” would be held at Hyderabad, India, October 15-16, 2012. The Summit will be hosted and facilitated by Government of India, and co-hosted and co-facilitated by Government of Andhra Pradesh & Greater Hyderabad Municipal Corporation. ICLEI will act as program coordinator and organizer. Objectives of “City & Sub-National Biodiversity Summit” proposed by ICLEI are as follows:
1) Review the implementation of Plan of Action, taking stock of the main programs that have emerged as a result of, or in support of, the Plan of Action including ICLEI’s Local Action for Biodiversity and Cities in Biodiversity Hotspots Programmes, and the Singapore Index on Cities’ Biodiversity,
2) Review the implementation of strategies, by local government, sub-national government and others, in response to the Plan of Action,
3) Express intent and consensus on positions among political leaders at the local and sub-national levels in a declaration characterizing the Summit and advancing the Aichi/Nagoya Declaration on local Authorities and Biodiversity,
4) Contribute to COP11 through a show of local and sub-national level support for Parties’ Implementation of the CBD including a possible speaking opportunity for local and regional government at its high level segment,
5) Contribute to COP11 through support for any COP decisions that may complement and build on existing COP decisions on cities and sub-national governments for biodiversity,
6) Launch important initiatives such as Cities and Biodiversity Outlook publication and Cities in Biodiversity Hotspots Programme,
7) Provide a platform for the exchange of global local government expertise and experiences.

Prof. Morimoto, co-chair of URBIO2010, introduced that the 3rd International conference of Urban Biodiversity and Design (URBIO 2012) is being organized by the Indian Institute of Technology Bombay and will be held in Mumbai, India, October 8-12, 2012. Conference themes were also announced. Expectations to URBIO was expressed from the participants.

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2012年3月21日 (水)

生態学会&EAFES at 龍谷大学

生態学会、龍谷大で17日〜21日。今回は、アジア生態学会連合(EAFES)との合同大会。

● 17日
 生態系管理専門委員会では,自然再生講習会を「千年の森づくり」を題材として徳島で開催することが決まる。協働による森づくりなど,先進的事例として発信する。また,自然再生を担える人についての議論。そうした人を支えていくための資格認定制度などのあり方について。だが,生態学会としてどのような技術を持った人を創りだそうとしているのかが不明確。。 WGをつくって引き続き検討とのことで,そのメンバーに入れられてしまった。。 困った。。

● 18日朝
 ホンさん(モッポ大学、韓国)のオーガナイズによるEAFESシンポ、"The role of vegetation science in changing Asia"。 僕は、“National Database of Vegetation Samples and Its Applicability in Japan”を発表。でも、ボロボロでした。。 久々の自己嫌悪状態。やっぱ,英語の発表は直前にスライドを仕上げて,ぶっつけ本番なんてことはやってはいけない。深く反省。。

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● 18日 午後
 景観生態学会(JALE)の運営に関する話し合い。事務局の負担軽減のためのあり方と,会員サービス向上のための方針について。事務局を支えてくれている若手には大変なご苦労をかけている。何とか改善し,彼らが活き活きと活動できる状態を作り出さないともたない。地域に密着した活動を行なっている会員が多いというJALEの特徴を活かしつつ,それをサポートするための体制や制度について,他学会との連携のあり方について,日置さんを中心に検討を進めてもらうことに。また,IALEとの関係を強化して,国際的な位置づけを明確にすることを通したサービス向上について,夏原さんを中心に検討してもらうことに。

● 18日 夜
 企画セッション「社会的意思決定における生態学の役割」では,地域連携型の研究のあり方,その中での生態学研究者の役割について真剣に考えている若い方がたくさん集まっていた。こうした人たちやNPO,企業も含め,社会的使命感を持って活動し,社会イノベーションにつながる活動をしている人たちを支援することを,JALEで担っていけるようになればいいな。キーワードは,社会技術。

● 19日
 自由集会、「博物館の生態学」。博物館における野生鳥獣管理に関するあれこれ。みんな,いろんな悩みを抱えつつ,でも前を向いて進んでいる。とっても楽しい。そして懇親会,大津,「利やん」というお店。
 鮒寿司,琵琶湖の生態系サービス その1。

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 ホンモロコの佃煮,琵琶湖の生態系サービス その2。

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 ビワマス,琵琶湖の生態系サービス その3。 

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 3種の魚,どれも琵琶湖の固有種らしい。

● 20日
 龍谷大学によって管理されている「龍谷の森」。なかなか楽しい散策道でした。低木等の刈り取りも行われていて,しっかりと里山管理しようとしているみたいでした。こんな場が大学にあると,いいですね。

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● 20日夕方 
 日鷹さんらの企画集会「里山における在来知と生物多様性管理」。日鷹さんが言う「内なる生物多様性」の概念は、もうひとつよくわからないけれど、小坂さん(総合地球環境学研究所)によるラオスの事例と、稲垣さん(静岡県農林研究所)による静岡での取り組み紹介はよかった。
 ラオスでは、水田の中に生えている草も野菜と同じ価値を持っていて、日々の食材として利用され、また、市場で野菜と同じ所に並べられ売られている。農作業の合間にお母さんや子供たちが採取する。Minor subsistence、遊び仕事の意味。カエルなども重要なタンパク源。生で食べるのがラオスの文化だとか。。 僕には無理だな。。 政府内では、寄生虫が問題として認識されているが、規制をかけることでこうした文化も消失していくのかも。
 静岡の環境多様性と作物の多様性。所変われば、作物変わるという話し。自家消費用にソバの栽培もあちこちで行われていて、そのことによって昔ながらの品種系統が保存されている。

● 20日夜 懇親会
 京風おでん。生麸,湯葉,九条ネギなど。生態学会懇親会前,待ち時間におでん屋で。京都の食材に見る,生態系サービス。。

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 懇親会、日鷹さんや佐久間さんらとの話し。なぜか舞妓さんが。。

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それにしても、生態学会は体力がいる。

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2012年2月26日 (日)

「都市の生物多様性」に関する研究会&フォーラム

森本先生(京都大)の主催による、「都市の生物多様性」に関する研究会&フォーラム。10時〜16時30分、京都大学芝蘭会館(別館)にて。

午前中に「都市の生物多様性指標」に関する研究会,午後から「都市の生物多様性フォーラム」。午後のフォーラムでは,京都市や名古屋市の生物多様性地域戦略の策定や指標の用い方について,また,パナソニックの取り組みについて紹介された。僕は,徳島での取り組みについて紹介。

URBIO (Urban Biodiversity and Design) Network代表のMuellerさん (Erfrut大学,ドイツ)とも久々にお会いして,楽しい時間。2年前,名古屋でのCOP10開催前に,その第2回国際会議を開催して以来。

今年のCOP11開催直前に,インドのMumbaiで第3回国際会議を開催することになっている。その後の事務局体制など,僕たちのグループに期待しているようなのだけれど,今の体力では少し難しいな。。

■都市の生物多様性フォーラム:13:20―16:30

2010年に開催された生物多様性条約COP10では、生物多様性の保全とその恵みの持続可能な利用に向けて、都市の果たすべき役割がクローズアップされ、また自治体や民間を含む多様な主体の連携促進が求められました。都市における取組みのためには、その現状の把握と評価、これからのシナリオの検討が必要とされています。今回、URBIO(都市における生物多様性とデザインに関する専門家の国際的なネットワーク)代表のミューラー氏をお招きして、世界最初の「都市の生物多様性概況(CBO)」プロジェクトなど最近の状況について、ご講演いただくとともに、我が国の取組みについても情報交換し、評価指標のありかたやCBOのキーメッセージについての議論を深めたいと思います。

・開会の挨拶:森本幸裕
・基調講演:N.ミューラー(URBIO代表、エアフルト大)
 「都市の生物多様性概況」は何を目指すか
・話題提供
 1)宇髙史昭(京都市) :京都市地域戦略策定に向けてー身近な自然度調査から考える
 2)飯田慎一(パナソニック):生物多様性と地域連携
 3)髙木俊孝(名古屋市):生態系サービスの見える化に向けて
 4)鎌田磨人(徳島大):人と自然のネットワーク
・討論
 コメンテータ;香坂玲(名古屋市大)、加藤正嗣(なごや環境大)、古田尚也(IUCN)、伊東啓太郎(九州工大)、今西純一(京都大)、浅枝隆(名古屋大)、夏原由博(名古屋大)
・まとめと閉会のあいさつ:小林達明(千葉大)

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2012年2月20日 (月)

卒業論文発表会

2011年度、卒業論文発表会。僕たちの研究室からは、昼間コースの7人、夜間主コースの1人が発表。それぞれに、最後の追い込みは見事でした。

岩本敏明 「徳島県の生物多様性保全上の課題-生活者の視点から」
岡 和樹 「高性能機械導入による人工林間伐可能エリアの推定」
悦宗利幸 「都市近郊里山の土地利用変化から見るリスク評価」
丸大一茂 「西日本6地域における竹林拡大予測モデルの作成」
中津充裕 「圃場整備水田域の排水路網におけるドジョウの生息環境解析と分布域の地図化」
上村嘉彦 「アユの食味に影響する環境要因の抽出」
坂東伸哉 「ダム試験湛水前後における河川内有機物の質的変化」
泉 雄太郎 「知床半島の河川におけるオショロコマ密度の現状と人為的改変が与える影響」

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2012年2月17日 (金)

修士論文公聴会

2011年度、修士論文公聴会。僕たちの研究室からは3人の学生が発表。落ち着いた、いい発表でした。無事に合格。おめでとう。

三幣 亮 「徳島県における森林ゾーニングの提案」
大西 舞 「自然資源の協働管理における地域マネージャーの果たす役割」
青山直寛 「佐渡市・国仲平野における水系ネットワーク再生の提案」

僕が直接指導したのは、三幣と大西。

三幣 亮 「徳島県における森林ゾーニングの提案」
 戦後の拡大造林とその後の林業経営の悪化から管理放棄された人工林について、1)土地の生産力、2)施行管理のしやすさ、3)災害危険箇所、4)自然林再生優先度、の4つの視点から評価し、今後も経済林として維持すべき人工林、自然林に転換していくべき人工林を抽出し、ゾーニング案として提案したもの。こうした複数の視点から人工林を評価し、論理的にその方針を示してくことは、国土管理を行う上で非常に重要である。本研究は、その手法と手順を明確にし、そして地図として提供しえる状態にまで完成させた。

大西 舞 「自然資源の協働管理における地域マネージャーの果たす役割」
 地域の自然資源管理に係る地域マネージャーの役割を、以下の視点から明らかにしたもの。1)沖縄県石垣市白保および広島県北広島町における自然環境の保全活動プロセスと社会ネットワーク構造の把握、2)2地域の比較をとおした地域マネージャーの役割の共通性抽出、3)2地域で見出された指標を用いた、徳島県における活動の診断および高次の共通性抽出。多様な主体の協働による自然環境保全の取り組みが重要になる中、本研究で明らかにされた知見は、協働のしくみの構築および活動の促進を行う上での社会技術として役立てることができる。

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2012年2月 6日 (月)

学位論文公聴会―荒木田さん

僕の学生の荒木田さんの学位論文公聴会。

「シギ・チドリ類の生息地管理に向けた広域モニタリングデータの活用手法の開発」

干潟等の沿岸域生態系の保全・管理を推進していくため、それらの場所を生息地として利用しているシギ・チドリに関する広域モニタリングデータを用いていくための手法開発を行なった。すなわち、環境省主導で実施されている「モニタリングサイト1000」により、全国135地点で蓄積されているシギ・チドリの個体数、分布データ、及び調査地の概況データを用いて、以下のように検討が進められた。
1)    モニタリングが実施されている調査地内の環境面積を用いて、サイトの類型化を行い、地図化した。
2)    「湾ユニット」という地形ユニットを新たに開発し、湾の地形を空間階層的に評価することで、閉鎖性の高い海域に立地する干潟の立地ポテンシャルを推定した。
3)    調査員によって定性的なメモとして記録されてきた「調査地の現況」に関するデータの活用手法を開発した。すなわち、それらデータを一度集約した上で、調査員にフィードバックする形でのアンケート調査を行って、シギ・チドリ類の生息地劣化を引き起こす要因を抽出した。そして、研究者へのアンケートで要因の構造化を行なった。
4)    モニタリングサイトの後背地の土地利用面積を開発圧の指標として用い、サイトの開発圧を類型化して、地図化した。
5)    これらの結果をもとに、沿岸域における生息地保全・管理の方向性を検討するとともに、今後のモニタリング調査のあり方についての提言をまとめた。

とてもいい論文だと思います。研究過程では、三橋さんに面倒をみてもらいました。ありがとうございました。

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2012年2月 1日 (水)

環境省植生図の作成に係る技術手法検討会

環境省植生図の作成に係る技術手法検討会,東京国際フォーラム(有楽町)にて,10時〜12時。

日本の6割の植生図作成が完了。そして,今のところ平成37年まで係る見込みとのこと。。 残っている山岳地域等の作成をどのように行なっていくかが課題で,それを効率的に行なっていくための技術検討が必要。

僕からは,星野さん(東京農工大)のアドバイスのもと,M1の安東くんが担当して進めている,植生調査データを使った群集・群落識別種の統計的抽出と植生区分の評価を報告。二次林を区分するための識別種は,うまく抽出できない。遷移によって,時間的連続性の中で種が置き換わっていくためだろう。

就職が決まっている安東くんは,この3月まで。発表を聞いてくれた皆さんは,とても残念がってくれた。それだけ必要性と見込みがある研究ということ。さて,4月からどうするか。。

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2012年1月25日 (水)

太田さん(岡山理科大)の学位審査会

波田先生から副査として招かれて,岡山理科大の学位論文審査会。波田先生は,僕の目標としてきた先生のお一人であるだけに,副査に招かれることは名誉なことでもあり,また,緊張もともなう。

お弟子さんである太田さんの発表タイトルは,「瀬戸内における地質・地形と植生の関係」。流紋岩地,堆積岩地,花崗岩地での植生配分の違いが,その基盤である地質を反映しているということを,タフなフィールドワークに基づく植生調査結果をモデル解析して示した。波田先生のお弟子さんらしい研究無事にパス。

審査会後の懇親会。波田先生,原先生(東京情報大),能美先生(岡山理科大)と。波田先生は根っからのフィールドワーカーで,僕が最も尊敬する植生学者の一人。
環境省が進める植生図作成業務の中国・四国地区ブロック会議でずっとご一緒させていただいている。植生分布のモデル解析の必要性や,いわゆる植物社会学的な凡例にこだわらずに現実的で有効な表現方法の利用等,実務的なことについても理解がある。そのため,中国・四国ブロック会議では,「役に立つ植生図とは何か」をずっと議論してきている。
今は岡山理科大の学長。刺激的で楽しい懇親会でした。

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◆ 今日は昼過ぎの列車で岡山へ。その前に、徳島駅で環境審議会鳥獣部会の打合せ。次期の鳥獣保護管理計画について。シカは大きな課題。 12/01/30 10:24

◆ 高松行きの列車(ちなみに、徳島は電車はない)。乗り換えで、岡山。たまたまドクターの学生と一緒に。岡山大でマングローブに関するシンポに参加とのこと。 
12/01/30 12:25

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