東環状大橋(仮称)の建設が進められている.朝夕の交通渋滞の緩和が主な目的となっている.一方,この橋は吉野川河口の干潟の上をとおることになっていて,橋脚の一つが干潟上に作られている.その干潟は,生物の宝庫となっていて,シオマネキやヒロクチカノコといった種をはじめとして,全国的には絶滅危惧種とされているものが普通に生活している.豊富なベントス(カニ類やゴカイなど)は,シギやチドリの餌となって,渡りを支えている.そのため,「東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク」にも登録されている.
「東環状大橋(仮称)環境アドバイザー会議」は,「徳島県が実施する東環状大橋(仮称)建設事業における環境監視に関する情報について,公正・中立性を保ち,科学的・客観的な解析・評価が行われるよう提言・助言を行うことを目的」とし,「1)環境監視に係る調査の内容・方法に関する提言,2)環境監視に係る調査の照査・解析・評価・公開に関する指導・助言,3)予測し得ない環境上の影響が出た場合の調査及び対策に関する指導・助言,4)その他,会議の目的を達成するために必要な事項」を行うこととなっている(設置要綱).
僕は,かなりの熱意をもってこの会議に参加してきた.「汽水域生態系モニタリング手法研究会」を徳島大学環境防災研究センターに組織して,モニタリング手法を検討し,県に提言もしてきた.
今日,その「東環状大橋(仮称)環境アドバイザー会議」があった.平成19年度(つまり昨年度)の報告書についてと,これからの解析方針についてが主な議題.毎年のことだけど,会議の何週間か前に分厚い報告書が渡されて,会議のときにその説明があり,内容を検討することになる.これはかなり疲弊する作業.報告書の中は生に近いデータがずっと続き,データを解釈するための分析はほとんど行われていない.「今は,アドバイザーたちの提言に基づいた調査が行われていて,解析と分析やそれに基づくモデル構築はこれから」と担当者は説明するけれど,その時点で虚しさが僕を襲う.毎年の調査の中でできること,確認すべきことはたくさんあるからだ.
そもそも調査というのは,何かを明らかにするために目標を持って行うものなのだから,当然,調査によって得られるデータの解析方針を念頭におきつつ調査設計がおこなわれるはずだ.何かを“科学的”に明らかにしていこうとするのなら,毎年のデータを使って解析してみて,解釈可能なことと不可能なことを見出し,課題を明確にしつつこれからなすべきことを考え,次のステップで改善していこうとし続けることが大事.行政であれコンサルであれ,そういう科学的思考は,大学の卒論や修論で学んできているはずだ.
河口域や干潟の環境評価手法が確立していない中で進められているのだから,担当者としてもどうしていいのかわからないという気持ちはわからないではない.でも,そういう科学的思考や,チャレンジというか,熱意を感じられないのがこの会議で,かなり疲弊する.科学的思考やチャレンジする気持ちを,担当者がアドバイザーに完全に預けてしまっている感じで,さらに,事業担当者も調査を請け負うコンサルもどんどん変わるので,なぜその調査を行おうとしていたのかという最も根源的なところさえ忘れられているのではないかと思ってしまうことすらある.
「暖簾に腕押し」というのは,こういう感じか..
さて,そのような中での今日の会議で注目したい結果が1つ.橋がかかることによって,シギやチドリ等の鳥類の飛行にどのような影響がでるのかを考えるための手がかりとして,東環状大橋が建設されている干潟(まだ橋はない)と,その1kmほど上流にある吉野川大橋で鳥の飛行高度を比較したもの.橋がない建設現場での飛行高度はほとんどが20m未満であったのに,吉野川大橋ではほとんどが20m以上となっていた.橋を避けて飛ぶために,高度があがるのかもしれない.橋の建設後,シギ・チドリは飛行高度を変化させざるを得ないのか,また,それによって採餌行動等に影響が出ないかどうか,影響が出そうな場合にはどのような対策をとるのか,このデータが単純に比較可能なものかどうかも含めて検討が必要だと思う.
また,ウモレマメガニという希少種の分布が橋脚を設置する予定の近辺に集中しているかもしれない,という一昨年の調査結果を受けて,それを明確にするたの調査が昨年度に行われた.その結果は,「よくわからなかった」というものであった.工事の影響を出さないよう,ウモレマメガニの分布を明らかにしようとする事業担当者の姿勢は評価できるものだ.けれども,そうした努力や成果を,目前に迫った工事にどのように反映させようとしているのどうかは定かではない.「よくわからない」という状況の中で何をすべきかを考え,意思決定していくことが求められる.その決定に際しては,「予防原理」を採用することが重要だ.
再び苦言になるけれど,こうしたデータを示しておきながら,それについて何の解釈も次の計画も検討もしようとしていないことには,かなり呆れた.. 何のための調査なのか,いつもその目的に立ち戻りつつ,出てきた結果に関心を持ってもらいたい.そして,検討することにチャレンジする姿勢を示してもらいたい.それが「説明責任を果たす」ということだろう.
科学的思考を醸成できないまま技術者になってしまっているのなら,それは,僕たち大学人の責任でもある.僕自身は,研究室のみんなには,きちんと調査設計ができて,その方針に基づいた調査ができる人,そして,その方法や結果をきちんと説明できる人,つまり説明責任を果たせる人になって欲しいと願っている.
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先日の合同ゼミと九工大の旅行の様子,明石君も紹介してくれてる.いい感性をもってるなあ.
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